経営改善の実行力を上げる

経営改善の実行力を上げる

先行き不透明な経済が続き、経営改善を重要なテーマに挙げる企業が増えています。経営改善は、計画を立案し実行及び統制をしていく、いわゆるPDCAサイクルが重要です。今回のレポートでは、主に中小企業における経営改善を想定し、経営改善の実行力を上げるためのポイントを述べてゆきます。経営改善の手法を知っていただき、貴社の活動の一助となれば幸いです。

札幌の経営コンサルティング企業 むらずみ経営グループ
中小企業診断士・経営コンサルタント 石堂 修

※当レポートは2012/09/16に作成した資料です。

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1.経営改善は立案してからが勝負

人口減少や公共事業の削減など大きな経済環境の変化が中小企業を取り巻いている。このような経済環境の中では、簡単に売上を拡大することはできず、経営の舵取りが難しくなる。イケイケドンドンの企業であっても売上確保が難しいため、企業の存続に必要なキャッシュフローを稼ぐことができなくなることがある。このため売上獲得と同時に、コスト削減や原価改善などの経営改善が必要となる。売上が現状維持であっても、より利益を生む筋肉質な組織とするため、事業全体の再構築を行うのである。経営改善は現状の把握から、問題点や課題の抽出、具体的な経営改善計画の立案、そして実行といったステップで進められる。しかし、計画の実現には困難が伴い、実行段階で絵に描いた餅となっている企業も少なくない。これは抜本的な業務の変更やリストラ、事業縮小など今まで経験したことがないことも経営改善ではテーマに挙がることが多いためである。当然のことではあるが実行していくと担当者の想定していないことが多々起こる。このような想定外事項を乗り越えるためには、強力なリーダーシップとスピーディな状況把握と検証、対策の立案がカギとなる。これらのことを踏まえ本稿では、経営改善計画の実行力を上げるためには、どのようなポイントがあるかを改めて考察する。なお、経営改善計画には、事業内容の改善として損益計算書を改善する取り組みと、遊休資産の売却や債務整理などによって貸借対照表を改善する取り組みがあるが、本稿では損益計算書を改善する取り組みを経営改善と呼んでいる。

経営改善を始めた後に
いかに実行し、
スピーディに
検証と対策ができるか

2.経営改善の7つのポイント

経営改善を具体的に動かしていくことは、既存の業務のあり方や組織の業務を大幅に変えていくことが必要となる。このような大きな変革はトップの仕事だ。実現していくためにはトップによる強力なリーダーシップとスピーディな活動が必要となる。そのため経営改善計画を実行する際には、次のようなポイントがある。

① トップのリーダーシップと経営改善チームの組成
② 財務会計から計数まで掘り下げた業績の把握
③ 業績の公開による危機意識の共有
④ 活動状況の見える化
⑤ 早期に小さな成功の獲得
⑥ 費用対効果に基づく投資判断
⑦ 月次から日次・週次へスピードアップ

以下にひとつずつみてゆく。

①トップのリーダーシップと経営改善チームの組成

経営改善は大きな変革を伴うため、既存の企業活動におけるしがらみや人間関係を乗り越えた推進が必要となる。このような変革には、第一にトップの強力なリーダーシップが必要となる。第二にトップを支え手足となるチームが必要となる。経営改善により各業務のやり方を変えることは、トップひとりの仕事では時間的にも物理的にも無理が生じる。また、変革をする際には相応の反発が起こるため、十分な説明や調整、応援など人間関係のケアが必要である。このため各機能・各部門のキーとなる人員を経営改善チームのメンバーとして巻き込み協力を得ていくことが必要となる。この経営改善チームは組織が持っている各部門機能からメンバーを選抜するため、クロスファンクショナルチームとも呼ばれる。このように経営改善を推進する体制としてはトップから経営改善チームを通して指示が伝達されるフラットな体制が望ましい。なお、チームの組成には組織構造自体を変革させる必要まではなく、社長直轄チームとして位置付けることが一般的である。ただし、経営改善の指示伝達系統と責任と権限については明確にすることが必要となる。また、選抜されるメンバーは、既存の組織における役員や部門長である場合もあるが、そうではない場合もある。従来の組織が硬直化している場合や、年功序列に基づいている場合には、まったく違う人材が選抜されることもある。このようなことから30~40代の若手から、計画推進力や人間関係力、問題解決力がある者を起用する場合も多い。また、経営改善チームでは、全社の機能を一気通貫して担当するチームとすることが必要である。たとえば、製造業である場合、営業から設計・製造・アフターフォローまですべての機能である。このようなことからメンバーの選抜に当たっては充分検討し、メンバーには事前に個別面談を行い、協力を仰ぐことが重要である。

②財務会計から計数まで掘り下げた業績把握

経営改善の実行するに当たり、チームメンバーは財務会計上の数値に留まらず計数まで掘り下げた業績の把握を行う。ここでいう計数とは、財務会計で扱う”金額”では表すことができない経営の実態を計る数値である。

<計数例>
ある製造業の場合 : 生産計画達成率、自社製品販売シェア、原価率など
ある飲食業の場合 : 宴会客数、戦略商品の売上数量、FLコストなど
あるサービス業の場合 : クロージング率、来店比率、問合せ数など

このような現場の活動を直接反映する数値により業績把握をすることにより、経営改善の成果をよりわかりやすく把握することができる。例えば、飲食業において戦略商品の売上数量を計数として取り上げた場合、経営改善では戦略商品のおすすめスキル向上策(具体的には、商品注文時においてタイミングを見ておすすめ商品を紹介するセールストークを練習するなどの取組み)を行ったとする。この場合に計数を使わずに売上高により業績管理をしていた場合は、全体の売上が改善したとしても、その改善が戦略商品をおすすめした結果なのか分析がしにくい。このため具体的に戦略商品の売上数量により状況を把握し、現場では何件程度を目標にするのかを議論し、その目標に届くようにスキル向上策を練るというとつながりを持たせるのである。経営改善を行うにあたり、もし計数管理が行われていない場合は、自社の業績に直結する計数とは何かを議論すべきである。また、業績管理に利用する財務数値をどのように捉えるかを見直す必要がある。次表に業績管理別に経営改善の利用可能性についてまとめる。表の下に行くほど管理体制は整備されていると言える。経営改善においては自社の管理状況を把握し、一段上の管理レベルが実現できるように検討する必要がある。

③業績の公開による危機意識の共有

前述のように掘り下げて把握した業績は、ある程度要約して従業員に公開することが望ましい。これは従業員の経営改善への参画意識を高めることや、業績への理解を深め危機意識を熟成するためである。経営改善はトップダウンで推進されていくが、できれば従業員の自立的な改善活動が同時に行われて欲しい。自立的な改善を促すためには、経営者と同じ目線になるように情報を公開する必要がある。しかし、中小企業においては業績を公開している企業は多くない。このような場合はなぜ公開できないのかを検討し、その理由自体を解決できないかを検討すべきである。

<業績公開の効果>
イ) 従業員の疑心暗鬼を防ぐことができる
ロ) 従業員の帰属意識を熟成することができる
ハ) 従業員の自立的な経営改善を促すことができる
ニ) 費用対効果を意識する組織風土が生まれる
ホ) 経営者と従業員が一体となって経営改善に向かうことができる

業績情報を公開する場合は、不要な不安を煽ってしまうことや、役員報酬や交際費などの費目が公開されることによる弊害を懸念することがある。公開することによりいたずらに不安を煽ることはお勧めできないが、弊害がある場合は、本当にその役員報酬や交際費などが必要なのか、従業員に不満を抱かれるほどの金額とする理由は何かを考える必要がある。

④活動状況の見える化

経営改善の状況は、結果として計数に反映し、同時に財務会計に反映される。しかし、結果だけを管理していては、売上を獲得するための営業活動や不良率を下げるための社内教育などの活動をコントロールすることができない。このため、経営改善の施策は具体的な行動まで掘り下げ、先行する指標を設定する。前述した飲食業の例であれば、戦略商品をお勧めするためにロールプレイングなどを行った場合、そのロールプレイ回数などが先行指標となる。これらの指標は各社の事業においてさまざまである。このため経営改善計画の立案において、実際の現場ではどのような指標を目標とするのかを議論しておくことが望ましい。このような議論の際には先行指標出来る限り定量化して、それぞれの認識にずれが無いようにまとめることが必要である。この取組みにより、結果管理から先行するプロセスの管理へとマネジメントの変革を行うのである。

⑤早期に小さな成功の獲得

経営改善を推進していくと、経営改善チームのメンバーには多大な責任や期待が掛けられる。この期待が裏返しとなり経営改善を開始し、ある程度期間を経過しても目に見える業績が出てこない場合、チームのメンバーは他従業員やチーム外の者からプレッシャーを受ける。このプレッシャーはメンバーの行動を委縮させるなど様々なデメリットが予測されため、発生しないように予防しなければ改善がうまく進まない。このため、経営改善を行う際にはすぐに業績に反映するまでの効果を求めたいが、早期に小さな成果(アーリーサクセス)を達成することを目標に据える方が良い。小さな成果であってもチームの成果として実現されることで、達成感を得られ、チーム外のメンバーにも状況を伝えやすくなる。

⑥費用対効果に基づく投資判断

経営改善の現場では、利益に着目するため費用はできるかぎり削減することが求められる。しかし、支出する金銭のすべての費用を抑制すべきと考えることには注意が必要である。業績を良くするためには改善するまでの運転資金や広告宣伝費など、先行して出ていく費用がある。また、抜本的な経営改善を実現するためには追加の設備投資が必要となることもある。これらの事柄における支出の全てを無駄な経費であるとして抑制してしまうと経営改善はなかなか進まない。費用をかけずに実行できる改善事項は限定的であり効果も少ない。このようなことから経営改善では費用対効果に着目して運営することが望ましい。しかし、費用対効果という言葉は会話の中で使われているが、実際に書面として分析されている場合は少ない。このため実施したい経営改善策について費用が発生する場合は、費用対効果を書類にまとめて判断していくことが求められる。中小企業においては、過去の経緯として経営者のトップダウンにより運営されてきた企業が多い。このような場合に、経営改善チームのメンバーは費用対効果を考えた判断を過去に経験してきていないことがある。このため費用対効果で考えて支出や投資の判断をしていくことについて説明をする必要があり、効果には短期的・長期的・定量的・定性的など色々な視点があることを伝えていくことが必要である。

⑦月次から日次・週次へスピードアップ

経営改善計画は実行段階における不透明さなどにより簡単には成功しない。このため検証・チェックから対策立案へのスピードを速めることは重要である。スピードを速くするためには、最低限、月単位の業績把握とチームによる検証が必要であり、できれば半月や旬間・週間での業績把握が望ましい。また、売上や各種計数で日次管理できるものは日次管理をしていくことが望ましい。これは月単位の検証ではサイクルが長いため、① 検証時に議論した内容が次の検証時には希薄になってしまうこと、② 毎日の活動が経営改善であるライブ感が熟成されないことが懸念されるためである。

3.経営改善後には磨き上げられた企業が残る

本稿に挙げた経営改善のポイントは様々な企業に当てはまる事項である。経営改善を行うタイミングは企業体質を大きく変革するチャンスである。前向きに取り組みを行い経営改善が実現された企業は高水準の業績をたたき出すことに成功した例も少なくない。このように磨き上げられた企業の経済的な価値は大きく、経営者にとっても社員にとっても大きな意味を持っている。何よりも経営改善を成し遂げた達成感や充実感が企業への帰属意識を強めて一体感のある組織ができる。本稿に挙げた経営改善のポイントがひとつでも役に立てば幸いである。

最後までご覧いただきありがとうございます。
計画の実現には困難が伴い、実行段階で絵に描いた餅となっている企業も少なくありません。
当資料が少しでも御社の実行力向上のお役に立てば幸いです。

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※このレポートは、北洋銀行が毎月発行している『ほくよう調査レポート』No.196号(2012年11月号)に掲載されたものです。

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