中期経営計画とバランススコアカードのポイント

中期経営計画とバランス・スコアカードのポイント

当ページは、「これから経営計画を作成したい」「今実施している経営計画をさらに活用していきたい」「経営管理を強化したい」という方に向けて、“どのような事柄が経営計画を立案し実行するポイントとなるのか”という質問に答えるために作成した資料です。経営計画は企業活動を効果的に行うために活用していただける効果的なツールです。

当ページをご活用頂き、経営計画や事業計画の作り方を知っていただき、御社の活動の一助となれば幸いです。

札幌の経営コンサルティング企業 むらずみ経営グループ
中小企業診断士・経営コンサルタント 石堂 修

1.経営計画の重要性が高まっている

人口減少による人手不足などの影響を受け、なかなか業績が向上しない企業が増加しています。そのため各企業では業績改善に向けて経営課題や新たな取組みが議論されています。新たな取組みは議論するだけではなく実行していかなければなりませんが、この実行段階における進め方が企業の業績を左右しています。ある会社ではしっかりとした書面に経営計画をしたため、その計画の進捗は全員で共有できるように見える化しながら進めています。一方で、ある会社では議論はするが計画書にはせず、その後の進め方はそれぞれの対応に任せる、“問題があれば打合せを行い臨機応変に実行しよう”という方法で進めています。前者は、「計画型」、後者は「臨機応変型」といったところでしょうか。「臨機応変型」の実行方法は、小規模企業であれば進めていけますが、企業が大きくなり中小企業・中堅企業となっていく過程で「計画型」になっていかなければ対応が難しくなります。

また、新しい取組みをするときに、何かあったら随時報告するという「臨機応変型」の対応は、「放任主義」と大きく変わりません。そもそも報告という業務は、何かあったらするものではなく、指示に対してズレがあったときや定期的にする業務です。最初から具体的な指示としての計画がなく、かつ、定期的な報告も求めない場合は、“部下が気を利かせて報告してくれる”のを待っているということになります。そのため、なかなか報告もあがってこないという状態になってしまい、結果として放任になってしまうケースが多いです。経営者はこのような状況を避ける責任があります。避けるためには、実行する打ち手のコンセプトや手法・手順、ターゲット、予算、期待する成果などを具体的に議論し、定期的なホウレンソウをしながら進めていくことが必要となります。このような“計画への具体的な落とし込み”ができている企業は意外と少ないものです。経営計画の実行段階で差が付く一因がここに見られます。

経営者は、
業務の方向性を合わせるために
目標や方針を具体的に
経営計画として掲げて、
成果が得られるように
組織を導かなければならない。

2.経営計画に期待する効果

経営計画を作りながら計画型の組織を作り上げて行くことは様々な効果があります。ここで特に重要なのは①と②の効果です。

① 提案力や価格競争力が高まる
経営計画により、しっかり考えこまれた提案を絞り込んだターゲットに行うことができます。旨そうな儲け話や事業に対するニーズは不景気の時代でも出てきます。しかし、しっかりとした事業プランの下で進めていかなければなかなか業績には結びつきません。経営計画では狙ったターゲットに必要な項目に注力しながら“ヒト”“モノ”“カネ”の経営資源を組合わせて投下していきます。機会を選択し、資源を集中して事業を行うことにより、提案する内容の幅や深さや提供できる価格が変わります。

② 組織人員の活動集中度が高まる
各人員のやるべきことが明確になり、優先順位を付けて業務に当たることができます。経営計画の中で、しっかりと選択した場合は、それぞれの業務に優先順位がつきます。

③ 組織の不満解消とやる気向上
会社の方針が問題解決に繋がっていく実感が持てることで不満が解消されます。また、今後の方向性が描けるため、やる気の向上に繋がります。

 

④ 変化に対応するスピードが上がる
経営課題に優先順位がつけられているため、上司の判断を随時伺わなくとも、ある程度業務を進められます。スピードは中小企業が大企業と対等に競えるポイントです。

⑤ 会議が充実する
計画書には組織として議論しなければならない経営課題がありますので、単なる報告だけの会議から脱却し本来の議論する場に会議を変革できます。

色々な効果がある経営計画ですが、“取り組まれていない企業”は逆に次のような組織となっていることがありますのでご注意下さい。

・値下げしかできない組織になってしまう。
企業として製品やサービス内容に強みが無くなってしまうため、結果として値下げだけで勝負してしまう。

・簡単に動かないカタツムリ組織
計画になれていないため簡単に動かない。また、計画がすぐに変更になることもあるので、梯子を外されないように自己防衛して動かない。

・自分のことだけタコツボ組織
計画的に組織に動くことをずっとしてこなかったので、自分のことだけを中心にして動いてしまう。他との調整や協力ができないし、経験も不足している組織。

3.経営計画書の種類

経営計画書にはその内容によって色々な種類があります。ここでご確認下さい。

(1)財務会計が中心の計画書
財務会計の分野に主眼をおいて作成された会計数値の計画であり、金融機関向けなどに多く見られます。計画書の内容は、損益計算書・製造原価計画・貸借対照表・資金繰り表(キャッシュフロー計算書)が主たる内容となり、外部への業績説明においても利用できます。一方で、部門別の計画や財務以外の行動計画は含まれていないか、もしくは若干の記載となります。

(2)単年度経営計画書
単年度(ある事業年度)における数値計画を主たる内容とした計画書です。(1)の財務計画に加えて、具体的な販売計画とその行動計画、製造原価の低減策など具体的な記述が多くなります。また、月別に展開することで月次予算資料と連携させることもできます。

(3)中期経営計画書  
中期(3~5年が目安)の期間を対象として、目標とする売上高・市場シェア、拠点展開、商品開発計画、人事教育計画、研究開発計画、投資計画などが含まれる計画書です。中長期の時間をかけて、じっくりと取り組まなければならない目標を設定することに特長があります。中長期の議論をするためには、SWOT分析などで時流を読むことが必要であり、将来の業績を作るために重要な分析となります。

(4)バランススコアカードによる中期経営計画 ⇒ 当コラムで推奨している計画書
戦略マップというツールを利用することにより、目標をバランスよく、かつ、繋がりを重視して整理している計画書です。また、スコアカードを利用することで目標を数値化し進捗を達成度(スコア)で管理します。戦略マップやスコアカードについては、当資料にて重点的にそのポイントをお伝えしています。

(5)知的資産経営計画書
企業の保有している知的資産を蓄積・活用することに重点をおいた計画書。知的資産とは、人的資産(技術・スキル、経験等)、構造資産(業務標準、IT、人事制度等)、関係資産(顧客名簿、提携パートナー等)などを指します。

【ポイント01】戦略思考 ~短期よりも中期~

経営計画を検討するときに、計画の期間・スパン・時間軸が重要です。

(1)今日の成果だけを追及していないか
業績を上げる為に“ 今日の成果”だけを追及しても簡単に業績は上がりません。これは業績を上げる特効薬は無く、ある程度じっくりと取り組まなければ回復していかないからです。「そうは言っても、今月、今日の売上が見えないのにじっくりとは取り組めない。」と言う話を良く聞きます。経営者がこのような考え方になってしまうと、短期的で場当たり的な取組みが多くなり、企業は衰退の道を辿ってしまうことが多くなります。あくまでも企業戦略は“ 今日と明日のバランス”が必要であり、今だけを追及するのは危険だと認識することが必要です。

(2)明日の成果を得る為に今日何をするのか
3~5年先の中長期的な視点で企業経営を考えると多くの経営課題があることがわかります。これらの経営課題から今なすべきことを選択して経営資源を集中させていくことを“ 戦略思考”と言います。昨日の延長にこれからの売上はなく、あくまでも明日のために仕事をしてきた積み重ねが3~5年後の業績を創ります。明日の為の仕事とは、研究開発や顧客開拓、事業の開拓・開発、企業間提携、業務改善などを指します。これらの仕事はすぐに成果に繋がることではなく、後から成果が付いてくるものです。そのため経営者が短期的な成果を追い求めると、“ 明日の為の仕事”には取り組みにくくなります。このような事態を避けるため、“ 今日の仕事”と“ 明日の為の仕事”を、バランスよく考えた行動や戦略が重要になります。

(3)3年後にどのような企業を目指しているか
前述した戦略思考を経営者が行い、そこで考えた戦略を社員に繰り返し伝えることが必要です。これにより全社員が会社の目指している姿を語れるようになり、目標と日々の仕事が一致します。御社では会社の事業にとって重要な仕事が何か社員は認識していますでしょうか。経営者はじっくりと戦略を伝え、明日の業績を作る仕事をしやすくすることが必要です。この環境には、人事評価や組織体制も含まれます。経営者が戦略を語ったとしても評価や組織、中間管理職の考えが異なるために、現場の活動ではまったく行われていないとうことがあります。現場の社員から「時間や資金もかかりますが長期的に取り組むので評価も考えて下さい。」という意見が上がってくることはほぼありません。中長期の視点で組織を考えることは経営者の重要な仕事として認識すべきです。

【ポイント02】4つの視点に目標を持つ

戦略的に経営計画を立てる4つの視点

経営計画に盛り込まれる内容は企業によって様々ですが、基本となる項目があります。この項目を整理したのが「戦略マップの4つの視点」です。戦略マップは経営計画で用いるツールですが、次の図のように4つの視点で戦略を捉えてそれぞれの視点に目標設定します。この視点は次のような質問を経営者に投げかけています。

  • 戦略を財務の目標値に置き換えるとどのような点が目標になるか。
  • 戦略を達成するために、どのようなお客様とどのようなニーズを重要視すべきか。
  • 戦略を達成するためには、業務プロセス(組織としての仕事のやり方)はどうあるべきであろうか。もしくは、足りない業務は無いだろうか。
  • 戦略を達成するために、各人員はどのようなスキルを見つけるべきか、または教育を行っていくべきか。
  • 戦略を達成するために、活用できるITシステムがないだろうか。
  • 戦略を達成するためには、どのような組織風土、どのような方達との連携や協力関係が必要であろうか。

このように4つの視点からビジョンと戦略を考えることにより、それぞれに目標が設定できます。

【ポイント03】果樹を実らせるように戦略を描く

【ポイント02】では、経営計画や戦略を達成するために何が必要かを4つの視点に分けて目標を持つことを述べました。しかし、4つの視点においてそれぞれ独立した目標を持っても効果は部分的に留まってしまいます。さらに効果を高めるためには、それぞれの目標を繋げて考えることが必要です。これは、下の絵の果樹のようなイメージです。果樹のようにそれぞれの目標には相乗効果があり、地面から上に育つようにすることです。地面とは人・組織・ITなどが入る「学習と成長の視点」です。このつながりは文章化すると次のようになります。“学習し成長した人と組織やIT”があり、“業務プロセス”により価値や商品が提供され、“お客様の満足”を得ることができると、売上や利益が見返りとして得られる。

このように、それぞれの目標は上下で相互に関係があります。先に4つの視点に展開した目標は、ばらばらに存在するのではなく、それぞれに繋がりがあるかを確認する必要があります。

下図のように4つの視点の目標はそれぞれに繋がりをもっているため、独立して考えるのではなく、繋がりを持って考えることが重要となります。

戦略マップ例 食品製造業の経営戦略を記述した戦略マップ

下図の戦略マップは食品製造業を例に作成した戦略マップです。一番右の列をご覧いただきますと、顧客の視点では売上向上に結び付けるために、「高付加価値,地域ブランド」により消費者に選ばれることを目標にしています。そのためには、業務プロセスの視点において、「製品開発プロセスの強化,R&D,お客様の声,共同開発」を年間業務の中で実施していく取り組みを定着させることを目標にしています。この目標は中小企業では製品開発に時間をしっかりと割く人材を専任で置くことができずに、結果として場当たり的な開発になってしまうという反省から出てきた目標です。学習と成長の視点では、製品開発プロセスを実施するために、組織の取り組みとして「製品開発プロジェクト」を立ち上げ、営業部門から製造部門まで組織横断的に関わる体制を浸透させています。また同時に、「農業者との関係強化 農商工連携」を目標に掲げ、地域ブランドを構築する取り組みを実施しています。このように戦略マップでは、経営計画で達成したい目標を4つの視点で整理して記述し、それぞれが繋がりを持っていることがわかるように記述します。なお、弊社は北海道札幌市にて中小企業向けの経営コンサルティングをメインにしているため、北海道の食品製造業の事例としています。

戦略マップ例:北海道食品製造業

【ポイント04】進捗を見える化するスコアカード

経営計画で掲げる方針や目標は、それぞれが具体的に行動できる目標値として落とし込まれている必要があります。この目標値を重要業績評価指標KPI(Key performance indicators)と呼びます。KPIはそれぞれの目標に対して設定され、経営計画を網羅するすべてのKPIを集めると12~20個程度になるのが一般的です。スコアカードはこのKPIを一覧表形式により参照することができる資料です。なお、各KPIは目標数値に対する達成度で管理することにより、達成状況が把握しやすくなります。

スコアカード例

全てのKPIを達成率で表記している例です。当資料とは別に各KPIの目標数値と実績数値を対比して管理する資料があります。

【ポイント05】参画型で議論する経営計画

経営計画は、PDCAサイクルの最初であり、計画した後にはしっかり実行していかなければなりません。しかしながら、経営戦略(計画)の約70%は“計画通り実行されていない”という調査結果もあります。この結果には、色々な原因が考えられますが、次の3つが大きな原因と考えられます。

  • 計画策定に実施する部門や担当者が参加していなかった。(密室型計画)
  • 計画で掲げた目標が大きすぎた、もしくは高すぎた。
  • 現状分析が不足しており時流や自社の資源に沿っていない。

この中で最初に挙げた密室型計画は計画作成段階の問題であり、意識を変えていくことで回避することができます。密室型計画は次のような意識が影響しています。「今後の方針や計画を議論すること重要ですか?」と質問すると多くの経営者はYESと言います。しかしながら、具体的に議論を進めていくと“できるだけ短時間で済ませたい。”という矛盾した要望が出てきます。中小企業の経営者は1人で何役もこなさなければならなくとても多忙となります。しかし、短期の業績を挙げることはやはり重要ですが、それだけを毎日の活動にしてしまうのはナンセンスです。このような矛盾を解決するために、効率的に議論を進める工夫やツール(戦略マップなど)を活用することや、専門家やファシリテーターを交えることなど、参画型であっても効率的に行う仕組みを作り上げることをお勧めします。

【ポイント06】社員の改善や声を取り入れる

社員の改善や声を募り、適切に改善を評価し、要望事項として社員の声を経営計画に盛り込むことで、より業務の実態に即した経営計画を立案することができます。また、自らの声が採用されることにより社内のモチベーションや改善意識を高めることに役立てることができます。このような取組みを行う際には、その手順やフィードバックの方法などに注意することがポイントとなります。

<業務改善制度により評価するポイント>
業務改善制度では業務改善を行った際や行ってほしい改善内容について簡単なレポートを提出します。このレポートの内容をあらかじめ設定した基準で評価し、必要に応じて1改善500円のようにキャッシュバックを設けます。

この際に、これから行う業務改善を報告させる方法は取りません。改善は日常として実施していき、報告を月次などのタイミングで取りまとめます。

< 社員の声を集める際のポイント >
・募集期間を定める
ある程度は提案内容を検討する期間を与えて募集する。

・募集区分を定める
提案の切り口として区分を定める。
例:品質及びサービス改善、業務環境改善、新製品、新事業、人材教育、IT導入、関係構築、研究開発、その他
※会社として重要視したい分野を予め決めることが必要。。

<その他注意事項として伝えること>

  • 既に取組みをしている業務改善等をさらに活性化させる案であっても良い。
  • 計画の内容は「アイディア」段階の案で良く、量を重要視する。
  • 新規事業案の場合、売上規模や分析はされていなくとも良い。
  • 募集した案の全てを採用することは経営資源に限りがあるためにできないことを伝える。
  • 今回採用しない場合は、過去のアイディアとして保管扱いとして見返せるようにする。
  • 以前に他のメンバー提出した案であっても過去アイディアを見て提案することができる。
  • 提案した内容について、責任者となることもあるが必須ではないことを伝える。

【ポイント07】顧客の視点で計画する

経営計画を作成する場合に重要となるのは、単に売上や利益の予算を設定することではありません。顧客の視点として、どのような価値をお客様に提供していくのか、どのようなお客様を想定しているのかということも重要となります。

今までの市場環境はそれなりに安定していたため、売ることができる製品やサービスがあれば、全てのお客様に対応するという企業が多くありました。そのため、それほど絞込みをしなくともそれなりの業績は確保できていたと言えます。しかし、市場が縮小する状況では、自社と競合他社との違いを明確にし、特定のターゲットのニーズに適した商品やサービスを提供することが求められます。中期経営計画を作るにあたり、戦略マップを利用すると「財務の視点で業績を獲得するためには、顧客の視点においてどのような価値を提供するのか」を議論することになります。議論を進めていくと、“全てのお客様”ではなく具体的に絞り込むことになります。

【ポイント08】経営環境分析は特に機会を重視する

中期経営計画の作成は次のステップで進めていきます。

ステップ1 ビジョン
中長期後の会社のなりたい姿とそれを為すために
あるべき姿を検討する

ステップ2 経営環境分析
時流と自社の現状と今後を分析する。
経営環境を社内(内部環境)、と社外(外部環境)に分けて検討します。

※詳しくはこちらのページにてSWOT分析の説明を参照ください。

ステップ3 戦略テーマの検討
時流と自社の経営資源から戦略のテーマを考える
(クロスSWOTマトリクス)
※戦略テーマとは、戦略のコンセプトや概略と同意

ステップ4 戦略の具体化
戦略マップの4つの視点に分けて具体化する

左記のように、最初に“ビジョン”を検討し、次に“経営環境分析(SWOT分析)”を行い、時流や自社の現状と今後を見つめなおします。そして、次に“戦略テーマ”を検討していきます。“戦略テーマの検討”では、“こうなりたいというビジョンと時流や自社の現状を合わせる”検討になります。具体的には経営環境分析で見つめなおした外部環境と内部環境を活用してどのように事業を展開するかを検討していきます。企業は経営環境適応業であるとよく言われます。企業は時流に適応していかなければ商売として成立させることは難しくなり、なりたいと思うだけでは実現していきません。そのため経営環境分析では、この時流を「機会と脅威」として見つめなおし、特に機会を重視して分析していくことをお勧めします。大企業であっても時流に逆らって事業を展開することは困難です。まれにトレンドを作っているように見えても、それは大きな流れに沿っているケースがほとんどです。例えば、iphoneのヒットもクラウドやモバイル化・SNS・デジタルネイティブという時代の背景があったことがヒットを支えています。このように事業展開をする場合に、時流に合わせることは特に重要なことです。今までの自社の取組みに固執せずに、新しい能力や商品を開発することをここで議論して下さい。

SWOT分析の検討内容

【ポイント09】機会を分析する

経営環境分析の最初はそれぞれの市場やターゲットにおける機会(チャンスやニーズの変化等)を出来る限り抽出していきます。

ステップ① 販路や商品を整理する
考える切り口を整理するため、商品・ターゲット・地域・販路などを書き出します。なお、自社の現状では事業展開をしていないところでも構いません。

ステップ② それぞれの切り口の機会
それぞれの切り口で、今後チャンスがある、伸びる気配がある、盛り上がってきているなどの機会は無いか考えて記入していきます。

ステップ③ 時流から機会を見る
ヒット商品や時代の変化から機会を検討する。

<ワークシート例> 機会を書き出してみる  例:冷菓製造業

【ポイント10】脅威を分析する

SWOT分析の脅威(T)の分析は次のステップで分析していきます。

ステップ(1)
ブレインストーミング方式で脅威と感じる社外の動きを挙げる。

ステップ(2)
大きな(マクロな)環境の脅威を分析する。政治、経済、社会、技術の4つをポイントにおける脅威を挙げる。

ステップ(3)
5フォーシズ分析により市場の競争環境を分析する。具体的に下図のような要因が自社の市場に影響を与えるとして考えます。※自社の市場を中央に置き、市場と周辺の状況を分析します。

 

5フォーシズ分析で実施する項目は次の通りです。

・業界内の競合
業界の他社がどのように動くのか(価格変更、新製品等)

・新規参入業者
当業界へ参入する場合の参入障壁の高さや参入事例

・代替品
扱っている商材を置き換えられてしまう新商品
※例 会社パンフレット ⇒ 自社印刷やホームページ

・売り手
自社が仕入れている原材料や卸業者の状況、原料高騰など

・買い手
買い手が寡占化する、人口が減少するなど買い手の変化

ブレーンストーミングを行った後に、5フォーシズ分析を利用することで客観的に自社の立ち位置を見ることができます。売り手や買い手との関係がどのように変化していくのか、業界外で代替えされてしまう商品は出てきていないか、というようにそれぞれの脅威を検討することがポイントです。

【ポイント11】強みと弱みを診る

SWOT分析における内部環境分析では、自社の強みと弱みを考えます。ここでの取り組みステップとしては、脅威の分析と同様にブレーンストーミングを行い、自由に自社の強み(弱み)を挙げていきます。次に各フレームワークを活用します。

フレームワーク(1) バリューチェーン
バリューチェーンとは、自社の業界における川上から川下までにおける価値を提供する繋がり(連鎖)を表した図です。自社だけではなく、業界として考えることにより、次のフレームワークであるVRIO分析において他社との比較ができるようになります。

バリューチェーンのイメージ

フレームワーク(2) VRIO分析(ブリオ分析)
リーソス・ベースド・ビューとも言われる分析であり、バリューチェーンのそれぞれにおいて、経営資源が強みや弱みとなっているかを検討する分析です。ここで扱う経営資源は一般的には、ヒトモノカネですが、これに加えて情報(IT)、組織、外部との関係を取り上げることでより深く分析することができます。この分析の考え方は、最初に今の時流に合わせるとその経営資源は必要であり、価値を産み出すかを問います。次に希少性はあるか、模倣できるか、組織として活用できているかと考え、それぞれの経営資源が強みか弱みかを判定していきます。

【ポイント12】クロスSWOTマトリクスで戦略を考える

SWOT分析を行った後には、抽出された「強み・弱み」と「機会・脅威」を照らし合わせながら戦略を考える作業となります。

<クロスSWOTマトリクス>
強みと機会をクロスさせて照らし合わせるといったように、内部環境と外部環境を組合わせて戦略を考えるツール。このマトリクスの“積極的攻勢”に当る強みと機会(「S」×「O」)の組み合わせで戦略テーマが考えられると、“時流に機会があり自社の強みも活かせる”良い戦略と言えます。

<アンゾフの 製品-市場 成長マトリクス>
戦略テーマには色々なタイプがありますが、このマトリクスでは大きく4つに分けて考えることにより、その戦略テーマの難易度を検証することができます。クロスSWOTマトリクスで導き出された戦略テーマをこのマトリクスに当てはめていくとどの部分の戦略になるかを確認できます。

【ポイント13】製品開発のジレンマ

業績をさらに上げるためには、“新しい製品やサービスを開発することが不可欠である”という結論になることが多くあります。特にメーカーであれば継続的な製品開発が必要であり、既存の製品を計画的に陳腐化させることで市場を刺激することや買い替えを促進する手法も取られます。サービス業や流通・建設業においても新しいサービスの開発や新しい手法の採用などは、社員のマンネリを防ぐことや他社との差別化を行うために必要となります。下図は、このようなイノベーションを行う場合に、企業が直面するジレンマを表した図です。“部門間”“制度”“歴史”“見通し”といった4つのポイントが、イノベーションに影響することを表しています。これらのポイントはバランスが重要であり、“どちらにすべき”と決めることは簡単にできません。そのため各所で“どうしてこうなるのか”というジレンマが生じます。図をご覧頂きどのようなジレンマがあるのかを理解して進めていくことで、対処方法を考えやすくなります。

※企業戦略論【競争優位の構築と持続】事業戦略編 ジェイ・B・バーニー著 P152より引用

【ポイント14】バランスを見える化するスコアカード

先に述べた戦略マップでは、経営計画の目標を4つの視点で整理することでバランスの取れた経営ができることを述べました。また、スコアカードでは戦略目標からKPI(重要業績評価指標)を抽出し数値化して管理することをお伝えしました。戦略マップとスコアカードを組み合わせて考えると、各KPIはその達成率が良いことだけが重要ではなく、同時に達成率のバランスが取れていなければならないことがわかります。このバランスは、スコアカードを下図のように“積み木型グラフ”にすると見える化されます。

積み木型グラフは、「学習と成長の視点」の達成率を土台として積み重なった状態を表しています。このグラフは積み木であるため下のグラフの達成率が高い場合は、ピラミッドのように積み重なりバランスが良い運営状態と言えます。

スコアカード 積み木型グラフ  ※それぞれの%は達成率を表す。

① 「学習と成長の視点」が欠如している組織
「学習と成長の視点」が欠如しているということは、人材教育・組織風土・ノウハウ・IT環境・外部提携などが確立されていない組織となっています。このため、将来的には業務をしっかりと回していく担い手がいないため、足元から崩れ落ちるように業績が落ちる可能性があります。このような組織は、過去の栄光にすがっている企業などの見られることもあります。

② “業務プロセス”が構築されていない
会社の業務は手順や工程が構築され、一定の業務品質となっていることが望ましい業務です。また対応方法や考え方も統制が取れていることが良い状態です。このような会社で行われた業務が品質や価格・満足のいくサービスとして“お客様の価値”を作り上げます。しかし、このような業務プロセスを構築するためには、“形式知を見える化すること”や“組織横断な製品開発プロジェクトを行うこと”、“分業による業務効率化と専門化を行うこと”、“お客様とのコミュニケーションルールを構築する”などが必要となります。これらの業務プロセスは構築するまでに時間がかかるため、二の足を踏むケースが多くあります。このため中小企業では業務プロセスが構築されていなく、個人の技術やスキルで品質が左右されることもあります。このように業務プロセスが構築されていない組織は、構築できているところまでが本当の実力であると認識しなければなりません。

③ 顧客不在型組織
顧客不在型組織は、お客様のニーズを汲み取ることができていない、クレームが増えているなどの場合に発生します。このような企業と取り引きしているお客様の意見としては、「仕方なく」「選択肢がないから」「取引を辞めると悪いことが起こる」「昔からの付き合いだから」というような意見が聞かれます。意外と不満を抱えながら取引を引きずっていることは多くあります。このパターンに陥っている場合は、代替製品や競合企業に業績を奪われる恐れがあります。顧客満足度調査やユーザー訪問などを活用しながら顧客の視点を大切にするように注意していきたいものです。

【ポイント15】自治体からのお墨付きで拍車をつける

中小企業の弱点である「信用性・信頼性」を高めるために、事業計画を自治体が承認する制度を活用することもお勧めです。中小企業新事業活動促進法により、経営革新を図る企業は自治体へ事業計画を申請できます。

<中小企業新事業活動促進法>
中小企業新事業活動促進法においては、「中小企業の創意ある成長発展が経済の活性化に果たす役割の重要性にかんがみ、中小企業の経営革新の支援を行うことにより、中小企業の新たな事業活動の促進を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」とされております。

承認の対象となる計画の内容としては、「新たな事業活動によって当該企業の事業活動の向上に大きく資するもの」であり、概ね、以下の4種類に分類されます。

1.新商品の開発又は生産
2.新役務(サービス)の開発又は提供
3.商品の新たな生産又は販売の方式の導入
4.役務(サービス)の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動

また、経営革新計画として承認されるためには、
・付加価値額 年3%UP  ・経常利益 年1%UP
のどちらかを達成することが求められます。

これらの条件をクリアした経営計画を自治体へ申請し審査に合格することで右のような承認書を得ることができます。なお、当承認には、融資が受けられることや補助金が受けられるといったメリットはありませんが、金融機関への交渉の切り口とすることや低利の政策融資制度へ申し込むことができます。

経営革新計画に係る承認書

【ポイント16】経営計画を活用する前提条件

① 経営計画書を作成する責任は明確でしょうか
数字を羅列するだけの計画では経営への効果は限定的でしかありません。そのため過去の実績数値から予測値を並べることは可能ですが、これはあくまでもシミュレーションです。それぞれの目標に対する責任は誰にあるのか、知識や教育不足で各部門の管理職が作成できない場合は、経営者が自ら考え、作成することが必要です。

② 過去の会計データなどはすぐに活用することができますでしょうか。最低でも三ヵ年の月別・部門別の実績資料が必要となります。

③ 過去の取り組みや分析データ、マーケティングデータはありますか。

会計データのみから経営計画を作成することは根拠として弱くなります。過去にどのような取り組みをしてきたのか、売上実績を分析するとどのようになるのか、拠点別にはどうなのか、得意先の属性別にはどうなのかなどの考察が必要です。また、売上実績の背景となっているマーケティングの取り組みも重要です。非財務の情報として、会員数、見積り提出数、納入台数、他社情報集なども重要な資料となります。

④ 財務会計の資料は社内で公開されていますでしょうか。
経営計画を議論するためには、ある程度のラインまで財務情報を公開していくことが必要となります。役員報酬などの人件費はナーバスな情報のため公開したくないという意見もありますが、人件費として丸めるなどの手法を取りながら公開し全社員が同じ視点で議論できるようにすることが必要です。

これらの取り組みが行われていない場合、経営計画の前段階としての基礎固めが必要です。それぞれのについて体制を整えることを検討してください。

【ポイント17】計画不要論への対処

経営に利用される計画には色々なものがありますが、多くの場合で次のような反対意見が出されます。予めこのような反対意見はあるものだとして対処することが必要です。

理由① 「計画を作れ」と言われても売上が読めない
「売れるときは売れるし、売れないときは売れないんですよね。」
「やってみなければわからないじゃないですか。」
このように、行き当たりばったりになっている会社は意外と多いものです。ここまではっきり言わなくても、計画数値、予算数値は“事実上は形骸化している”ということもあります。しかし、売上は読めなくても“人件費や経費”は毎月支払があります。これらの“支払に必要な額”から逆算すると、稼ぎ出さなければならない粗利益やキャッシュフローが算出できます。売上は読むことも必要ですが、やらなければならない売上を理解することも同様に必要です

理由② ど~せ、計画どおりに行かないから。 
「がんばって作っても、計画どおり行ったためしがない。」
こういう理由で計画を否定している場合は、“計画通り病”にかかっています。

 計画通り病 : 立てた内容通りにことを進めないと気が済まない。または、ずれた分だけペナルティがあるという企業風土。

計画は、目標数値と比較して現状とのギャップやズレを明確にすることで、問題を見つけ、計画の達成に向けて対策を打っていくためにあります。計画を立てても計画通りに行かないということは、企業活動とお客様のニーズがズレていることになります。このズレを知り、企業活動をどのように修正していくかを考えることを意識してください。

【ポイント18】良い目標の条件

経営計画が経営者・従業員にとっての良い目標となり、自分の目標として活用していくためには次のような条件があります。この条件をクリアすることに対して、達成意欲が沸くかどうかが重要です。

1.ゴール(達成状態)がありありと思い浮かぶ
ゴールが明確になってはじめて、計画の効果や達成度を評価することができます。ゴールとは、最終的なイメージを言い、具体策を考えるより先にゴールを描くことが大事です。

2.達成可能性を五分五分と感じる
達成可能性がまるで無い目標は夢物語になってしまっていることもあるため、注意が必要となります。一方で、すぐにでも達成できてしまう甘い目標設定も問題です。次の条件と照らし合わせて、達成可能性が五分五分として考えられる目標を設定しましょう。

≪五分五分の条件≫
① ゴールをイメージできる。
② 具体的な行動計画を立案できる。
③ マイルストーン(中間目標)を設定できる。
④ 計画書として明文化できる。
⑤ 組織化できる(必要な人員が人数・力量ともに揃えられる)。
⑥ 既存業務と両立、もしくは、既存業務から離れて実行できる。
⑦ 達成したいと意欲が持てる。
⑧ 条件を満たさないが増収傾向であり、今までの傾向から可能性が高い。

3.自分・部門の目標として納得できる
参画型で作成することや現場と経営層のコミュニケーションが取られた目標となっていることが必要です。

4.魅力的な目標でありそれを達成したいと思える
会社のビジョンと個人のキャリアプランが合致しており、会社の目標を達成していくことが自分のキャリア形成にも役立つことが理解していることが必要です。

5.会社目標に貢献できる実感がある
会社の目標と自分の業務のつながりが明確になっており、日々の目標を各自が設定できることが必要です。

終わりに

最後までご覧頂き有難うございます。経営計画の中でも中期経営計画は事業を展開していく上での骨子となる重要な計画です。当資料が少しでも御社の事業展開の役に立てば幸いです。なお、弊社ではキャッシュフローや経営計画を活用するためにコンサルティングメニューを用意しております。こちらも併せてご確認ください。